社内奴隷あかり④

小説

4章「誘い」

翌日、

「野口さん、ちょっとこっちに来てくれるかな。」

佐々木に呼びだされ、野口結華(のぐちゆいか)は席を立ちあがる。

なんだろ、佐々木部長に呼ばれるなんて久しぶりだなぁと思いながら、野口は佐々木のほうに駆け寄る。

「はい、何でしょうか?」

そう尋ねる野口に佐々木は、

「ちょっと、言いにくい事なんだけどね、最近職場の雰囲気が悪くなってるじゃないか。それで自分なりに調べてみたんだよ。」

佐々木の思いもよらない言葉に、え?そんな事ないけど何かあったのかしらと考える野口。

「そうですかねぇ、何かありましたか?」

と佐々木に尋ねる。

「あれ?野口さんが気づいていない?」

と困惑してる様子の佐々木。

私の事で何か問題でもあるのだろうかと不安になる野口。

「いやぁ、最近、野口さんの悪い噂を聞く時があるからさぁ、もうちょっとそこは節度を持って行動してほしくてね。」

悪い噂というのに、真っ先に加藤の顔が浮かんでしまった。

加藤は野口に対して仕事の嫌みだけじゃなく、服装や姿勢などの事もたまに嫌みったらしく注意してくる時がある。若い女に対して嫉妬してるんだわと思う事も多々あった。

加藤の顔を浮かべながら、

「あのぉ、具体的にはどのような噂なんでしょうか?」

と佐々木に尋ねる野口。

「うん、まぁ、僕は野口さんの事を信じているんだけどね。仕事終わりにバーに出かけて夜な夜な男をとっかえひっかえしてるとか。最近だと、素人もののね、そういった大人のビデオにまで出てるとかってのを聞いたなぁ。」

それを聞き、全く身に覚えのない事で野口は怒りが湧いてくる。

「そんな事実一切ありません!誰がそんな事をっ!」

と、少し声を荒げながら佐々木を問いただす野口。

きっと、加藤さんだわ。ついにこんなやり方までして私の評価を下げてきたのねっ。

そう思っていた野口だが佐々木から意外な名前を聞く。

「んまぁ、調べた結果なんだけど。結論から言うと噂の出どころは鈴本さんみたいなんだよなぁ。」

「この件について、また別に時間を作りたいんだけど今日の仕事終わりに休憩室にきてくれるかな?」

そう言われて、野口は特に用事も無かったので、

「わかりました。」

と、返事をしてから自分の席に戻る。

私の知らない所で私の悪口が言われてるなんて。しかもありもしない事をっ。けれど、鈴本さんが犯人?そんなような事する子には見えないのに。

鈴本あかりは、野口から見ても真面目に仕事に取組み、誰にでも愛想よくする感じの良い後輩だった。

きっと、何か話が捻じれて鈴本さんが犯人になっている可能性もあるわ、ちょっとだけ自分からも探りをいれようかしらと考える野口。

お昼の休憩時間になり、野口は真っ先に立ち上がり、加藤の方へ駆け寄っていく。その時無意識のうちに一瞬あかりの方を睨みつけてしまった。ビクッと怯えた表情をするあかり。

「加藤さーん、ちょっと待って下さい。お昼の前に少しだけお話いいですか?」

そう駆け寄ってくる野口に加藤は、

「あら、珍しいじゃない、野口さんが私に?」

と、笑顔で答えてくれる加藤。

加藤が笑顔で対応してくれるなんて、そんな事あったかしらと驚きながらも率直に自分の噂の件について尋ねる野口。

「あのぉ、私の噂の件についてなんですけど。」

と、小声になる野口に。

「ああ、その事ね。」

と加藤も小声になる。

「何か私の良くない噂が流れてるって聞いたんですけど、加藤さんの耳にもはいってたりしますか?」

そう野口が尋ねると、

「そうねぇ、ヤリマンだとかライブチャットでエッチな動画出して荒稼ぎしてるとかってのは聞くわねぇ。」

加藤からの返答に驚く、野口。

佐々木部長から聞いた事以外にも変な噂が広がっている。なんでよ、なんで私を狙うのよ、と思いながら。

「はぁ。」

とため息をつく野口。

「あのぅ、加藤さんはその噂誰から聞いたんでしょうか?」

と問いただす野口に加藤は、

「んー、難しい問題になっちゃうでしょうからねぇ、その事は本人にも言うのは躊躇われちゃうし。

誰かとは言えないけれど、私は男性社員の方から聞いたわ。」

その言葉にショックを受ける野口。

誰かの特定もできない状態。しかも男性社員から聞いただなんて、きっと私の噂は男女問わず会社内で広まっているんだわと怒りがこみあげる。

肩を落とす野口に加藤は、

「野口さん。安心して、私はあなたがそんな事をする人間なんて思っていないわ。あなたの今までの仕事に対する姿勢、みんなと仲良くやっている姿を見たらそんな事をする人なんて思えないもの。」

「きっと、他の人たちも一緒。噂は広まっちゃってるかもしれないけど、みんな野口さんの真面目な姿をみてるから、誰もそんな噂信じちゃいないわよ。」

「ほら、元気だして。」

と野口の肩をポンポンッと軽く叩く。

加藤さんってこんなに優しかったのと驚く野口。

同時に疑ってごめんなさいという気持ちで目頭が熱くなってくる。

今まで、私から積極的に話さなかっただけで、本当は優しい人なんだわと思う野口。

同時に怒りの感情が沸いてきて、部屋から休憩に向かおうとするあかりをまた睨め付ける。

「ありがとうございます。私、こんな悪質なやり方には絶対に負けません。」

そう加藤に言う野口の顔は、犯人を絶対に許さないぞという決意に満ちていた。

17時になり、野口は予定通り、佐々木に呼び出された休憩室に行く。

佐々木はタバコを吸っていた。

珍しいなぁと思いながらも野口は佐々木に近寄って、

「あのぉ、今朝聞いた件なんですが。」

と話しを切り出した。

「うん、その事なんだけどね、俺も男性社員連中から聞いて情報源を辿ってみたんだよ。」

「そしたら、鈴本あかりが噂の出どころって言うじゃないか。何か鈴本に恨まれることでもした?」

そう聞かれた野口は、少し考え、

「もしかしたら、最近私が壇さんとよくお話してるからかもしれません。」

「ほら、鈴本って壇さんの事好きっぽいじゃないですか。」

と、言う。憎たらしさからかいつの間にか呼び捨てになる。

「おお、そうなのか。」

と、思わず面白い情報を手にしたなぁと思う佐々木。

「とにかく、この件について野口さんはどうしたい?」

そう聞かれる野口は、

「勿論、許せないですよ!同じ目じゃつまらない、ちゃんと制裁を受けてもらわなきゃっ!」

と言葉に怒気をもたせる。

「うん、やっぱりそうだよね。同じ部署にこんな同僚がいるなんて居心地悪いしね、しっかりと制裁を受けてもらうか。」

そう言う佐々木はある計画を野口に語りだす。

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